宇田道隆 昭和12(1937) 日記 

農林省水産試験場 技師 (31-32)

歳頭之辞

新年の年を新張りの家に迎へて健やかの吾子と屠蘇祝ふかな

  吾れ33歳  妻28歳  長子朋之 6歳 次子東平 5

 

世界は無条約時代、大戦の一歩手前に戦慄している。道義は地に委して金力と権力が吾が世を謳っている。仮面の妖怪が躍る。白昼夢を現実に見る。世界は壊滅から再生に歴史の輪廻を喚び起こそうとする。水産は乱獲と侵略とを以て躍進を呼号するが、漁民の緊迫は明日の問題である。しかし現実からは逃避を許さない。背水の陣を布いて敢然と怒涛と戦おうではないか。

 

      日 課

平日 午前6時半          起床、洗面、体操、謡曲

              7                     朝食、新聞、上厠、支度

              740           出勤

              9                     登庁

              正午                    昼食、軽体操、図書室、自室、手紙等

              午後1時〜4時半 執務

              5時前                 退庁

              6時半                 帰宅

              7                     ラジオニュース、新聞、食事、雑談

              8                     手紙書きその他、俳句

              8時半〜10    勉学 漁況論・魚群体論・海洋学(水理的)

              10                   体操、日記

              10時半               就寝

日曜・出張時もこれに準ず

 

正しく 美しく まことに

健康に 規律正しく

明朗寛厚に 整頓勤勉

余裕ある努力

寡黙 実行

 

昭和1211

今年の望み 山積した宿題の解決

今年のうちにやりたいこと 「海洋」「海の物理」一般的事項

知識の整頓、整理…海洋調査の効果に関する研究

 日本近海の海洋学

 海洋不連続線論  漁況論  漁況予報論  魚群体論

 海況と漁況との関係の基本的研究方法と従来の進歩の大観

 

 生活を単一にして精神を目的に集中せしめたい。

 隠忍自重して功を急がず地味な努力を続けること。

 他人の毀誉褒貶に心を動かされぬように。

 確実に一歩より進め、自分の正しい考えに従って躊躇なく進め。

 

 海洋の正確な智識の領域を拡げて行く。漁業の上にそれを活用する。

漁業自体を突っ込んで研究し、不動の基礎を持たす。

自分の人間を磨く。詩の世界を楽しむ。

理学、俳句、謡曲、これに植物を栽培することをやりたい。

人を無暗に怒るな。

酒は十杯(小盃、一合)以上飲まない。

 よく知らないことは、知らないと言うこと。

 不用の読書、談話を有用に化せしめたい。

 

蒼鷹丸 三陸沖海洋調査 17日〜123

17() 曇り 北風

 午前 丸川、木村、相川氏等に挨拶

 午後1時 蒼鷹丸月島出港す。見送る人多し。

 午後3時 鶴見に碇泊。重油20トン積む。1トン40(1海里の油代30-35)

午後7時 上陸。潮田で買い物。

18() 北東風強く、白波4

  午前9時出発、午後0時半館山着。今日一日待機に決す。

  午後3時上陸 千葉水試に赴き、菅沼場長、野本、石黒氏と談。房丸小川船長とも談。

  マグロ漁場と潮境、海流を延縄で測ること。マグロ横に餌食う。釣り針折れ延び今はなし。昔

あった。形は今のが最善だろう。明日出て、来月初めに帰る。行き帰り観測。

大島幸吉博士来る。長崎の方から「イワシ行脚」の由。福岡(製造)技師を加え、イワシ座談会

になる。日本海イワシ系統、対馬暖流に逆行してどうして帰れるか。津軽海峡に中羽の連続も。

東北海区の中羽イワシ一系の南下。銚子寒の内3月最盛漁産卵期、東京湾口金田湾沖、海底深み

に「伏す」老齢イワシ(56才以上)骨が底引き網にかかる。

 脊椎骨分からぬが、耳石分かろう。日本海中羽年若いが、太平洋側のは年とっても大きくなら

ぬ。20cm以上になかなかならぬ。30海里以沖のイワシ群の分布程度。魚群の厚さ垂直。日本海20m

以浅、太平洋30mで少なくなる。豊凶秋季り。最近数年、銚子豊漁。しめ胴、丸より角よく、よ

く締まる。

19

  館山午前7時発。正午野島崎沖 第1点観測、波浪4

2点 午後7時、波浪6。低気圧に入り、雨来る。船酔いに食もとらず。

110

  第3点 午前2時。大浪部屋に打ち込む。

4点午前8時。強風雨交じりに吹きつく。

  この一昼夜の苦しさに、つくづく観測の困難を嘗めたり。蒸し暑きうえ、ストーブに汗かき苦

しむ。

  正午カツヲ1尾曳縄、450匁。3200匁、ビンナガ7尾かかる。

  潮境と見え、水温19度より18度に急変するところなり。

  白浪騒ぐ中に発見したるビンナガマグロの狂奔する群れこそ珍し。

  第5点 午後2時。激浪打ち込み危険。観測の極限なりと自覚す。

  第6点 真夜中。星少しく見え、やや海凪ぐ。

111

  漸く湯茶喉に入り、餓鬼道を脱す。夜食を少しく口にすれども、また嘔吐。リンゴと葡萄酒に

命をつなぐ。観測の度には決然として起って風浪と闘う。

 午前7時 第7点。

午後2時 第8点。依然雨霰と変じ来る。

午後9時 第9点。サンマ(21cm)1尾、デッキで拾う。燈火小サンマ群の泳ぐを見る。

少々粥食べ始む。嫌悪嘔吐の神経疲弊して、飢餓の感、これを克服せるなり。

「船酔いにて死せる者、かつて聞かず」

112

  午前4時半 第10点。吹雪来る。

  午前12時 第11点。水温6.6℃。

  午後7時 第12点。船体動揺激しく、作業困難す。吹雪来る。

113

  午前3時 第13点。猛吹雪、風浪激しく観測不能。

  午前6時半 第14点。

  北海道近海に於いて、積丹沖に貨物船愛国丸33百トン沈没。乗組み40名中、生存7名。大

楽毛海岸にトロール船27トン遭難。12名中、生存3名。各地大雪列車遅延。実にこの時なり、750

ミリの低気圧暴威を揮って千島海上に遁走す。

 午前10時、襟裳半島の山々雪に輝きて海上に現る。雪晴れの朝なり。

 釧路南65海里点にて観測を行う。

 午後3時 第15点。水温3.1℃。

 午後7時 第16点。3.1℃。波全く収まれり。

 午後10時 機関に故障ありて、午前まで修理、ゴトンゴトン。

114

  午前2時 第17点。デッキ凍る。

  霧晴れ、午前9時入港。気温零下13.5℃。海面湯気濛々なり。

阿寒岳と久しき対望を喜ぶ。釧路町や昨日の大雪の名残を止めて、屋根白銀に包まれざるなし。

河の氷盤流れ来る。

 午前午後、観測整理し、役所に報告す。浅利君O2測定。新聞記者、釧路新聞、北海タイムス来

り、観測の苦辛を話し、水温高低、海流のことは言わず。余等、千辛万苦、心血を注いで、この

一つの水温の値を掴むべく、遥かに来るなり。これを測るにせよ、纏めるにせよ、慎重にして敬

虔ならずんば能わざるなり。軽率なる記者の舞文曲筆に委する豈堪うべけんや。

115

午前船中で。

午後、船長、機関長と田村友太郎氏訪問。去年6月イワシ網に大サンマがしこたまかかったこ

とは今までない。底曳漁獲は大正初めからみて減らない。遭難船を白鳥丸が救助に向かった時の

話を聞く。

116

  午前9時釧路出港。珍しき凪日和にて暖かし。

  Sta.18(襟裳岬東100海里)表面観測。同点午後6時観測。ウネリはあれど、風浪殆どなし。

117

 Sta.19午前1時 天気崩れ始む。高気圧東に進出し来る。

 Sta.20(200海里)午前7時。粉雪、風3-4に増し来る。船員間に前途に危惧の念あり。

 8時落石岬東100’に向けて廻航す。天候悪変を恐れてなり。蓋しこの近海烈風浪を捲く時、そ

の猛威真に恐るべく、漂流の危険あればなり。

 何事も公式通りには行かず。果たしてSta.21(22)に行きて結果に幾何の差を生ずに至るやは断

定し難けれども、北海に報酬乏しき労苦を耐えて公務に勤る人々としての気持をも斟酌せざるべ

からず。

 元来、この襟裳東の線たるや、北海道水試の受持線なりしを、同水試20日間中の2, 3日の凪

を見て調査せるもの。これを引き受けたるものなれば、…。

 Sta.87(落石東100海里) 午後4時。4.5℃。

 Sta.86(落石東 50海里) 深夜。烈風粉雪、波浪5

118

  Sta.85 午前6時。落石附近、1.3度、気温-3℃、甲板凍る。

  無事、予定の北海道沖合2線の観測を終えて安堵す。凪いで来る。空は晴れて感謝すべき朝日

の昇る美しさを波間に見る。

 これより大黒島沖の観測を終えて釧路へ。

119

  午前中、現象的音響測深儀のこと、調査室改造のことを山口氏と語る。

120

  朝起きたら炊事場の水が出ないと言って騒いでいる。水管が凍って故障が起こったというので

ある。昨夜から今暁にかけて無性に寒かった。薄い海霧に、例によって氷の盆のような蓮の葉の

ようなのが浮いて、船の周りを取り囲んでいる。しかし薄手のものである。

 8時半の気温-13℃。

 9時半抜錨。愈々ホームコースに入る。珍しいベタ凪である。さらば北海道の雪の山々よ。釧路

の灰色にくすんだ街よ。白い水鳥が港口に遊んでいる。

 午後3Sta.73を観測する。

 夜、月に暈輪が見える。南の銚子東を740ミリの低気圧が70kmの急速で東へ飛んでいるのだ。

 Sta.74 津軽海峡東、午後10時、粉雪飛ぶ。9.2

121()

  Sta.75 八戸東、午前3時半、粉雪、9.4℃ 

0-100m9.3℃位のが、200m10.9℃、400m10.6℃を示し、600m6.3℃には驚いた。直ちに再測し

ても寸分違わぬ結果になった。

 Sta.76 釧路を離るること200海里、魹崎東方に位置する。午前10時半、0-100m9.3-9.4℃、

200m10.1℃、400m5.7℃、600m2.6

 この中暖水塊の本性こそ注目すべきものである。恐らく過去の資料にも同様のものがあったと

思われる。潮境に付随する特殊な現象であろう。SO2と併せて調査をするものと考える。

 Sta.77 午後6時。9.3度、波浪凪いで楽になる。ウネリあり。

122()

  午前0時 Sta.78 金華山南東、7.8℃にて最低

  夜、サンマ(21.5cm)飛び込む。

  午前6時 Sta.79 9.0℃ 

  正午 Sta.80 9.6

  午後3時 鹿島灘にて水温急昇す。

  午後6時 Sta.81 銚子沖 16.7

123()

  勝浦沖の観測を終えて、館山へも寄らず、一路東京に急行し、午後4時川の中へ滑り込む。ラ

ストをきかしぬ。5日節約成る。早く帰れたのは嬉しい。

 

 

武蔵丸 伊豆諸島にて沿岸海洋観測の依頼 311日〜318

      ) 武蔵丸は東京府水産試験場所属、昭和7年就航、104トン。

311 雨

  午前9時、武蔵丸で東京出港。

  横浜沖あたりから、篠つく猛雨となり、辺弁せざる有様。やがて波涛山の如く狂う。台風740

ミリ、正午紀淡海峡より東北東に向かい、毎時速70kmで進行し来るに遭ったのである。

 午後3時半三崎着。手桶にヘド一杯はく。

 港内も荒れてをる。防波堤に激浪天冲の壮観を呈す。風速15m/s内外。

 午後5時上陸。

312

 朝7時眼覚め、やや頭痛、少し飲み過ぎらしい。

  魚市場を散歩。土佐大丸海幸丸、三福丸、マグロ、カジキ、バチの荷揚げしている。

  午前9時出港、大島へ。

  午後2時、波浮入港。赤い溶岩層が断崖に燃えるように覗いている。松が崖に横なりに美しい。

港口には乱礁に白波散る。

   波浮分場へ。松本茂雄氏と会談。場長は何やら密談。やがてカバン下げて飛んで帰る。

波浮神社に独り参る。松葉の散って、静かな社。

港の水の紺碧はまことに美しい。岸の家は余りきれいでない。ことに東岸のあの変な料理屋の

変な白首のスミカあたりは。つつましいアンコの姿は余り見られぬ町であり、漁師気分が横溢し

て、詩の大島を訪ね来る人には幻滅感を与えるものと思う。米沢氏はナマ舟(運搬船)に乗って今

夜東京へ直行するという。猿之助に似た江戸っ子坊チャン肌の氏と別れる。

 午後6時出帆。荒れる海の中へ南指した。

313

 一晩ローリングひどく、振り落とされそうで、ネドコにつかまってよく寝れない。また海酔い

して恥ずかしい。

午前6時、八丈島八重根港に着く。

鬼が島のような真っ黒な焼石のガラガラと磯まで押し出した島の岩の間にエグリコマレタ船着

場へ。合羽着て上陸。トラックで三根講習会の連中と見晴館で宿とる。あさめし。ここへ船長と

現業場の万谷氏が来た。

大賀郷まで雨湿りのジヤリジャリした赤黒い砂の道を歩んでゆく。鶯が鳴く(年中鳴いている

)。晴れて八丈富士が見える。大牛、小牛があちこち見える。牛2頭持てば暮らせる。テングサ

は子供でも150銭になるという。天恵豊かな八丈島である。黒と白の斑の牛である。桑見える。

春蚕もう済んだらしい。黄八丈、娘さんは皆これを織る。

大賀郷に到り、漁業組合で理事稲葉又三郎、書記辻安平氏に会い、観測の必要を大いに説き、

やってもらうことになる。永続につき、くれぐれも念を押す。旬1回、現業場より資料集めて、

ここから送ってもらうことに約束する。

春トビ、今年400尾、八丈近海に初漁あり。例年より20日〜1か月早し。

トビ漁には特に力を入れて、漁期間調査している。

測候所では新波止場で午前10時観測というから、組合では旧波止場口で、午前8時、午後2

に観測して貰うことにする。

自動車で中ノ郷に行き、ここで海洋観測の必要を力説する。村の雄弁(八丈一のシャベリ男)

小岩戸の鼻の潮境を指して、ケミッチョ(混ミ潮)潮山の移動を論ず。ここがトビの漁場になる

という。

三根に帰り、神港で荒れ狂う怒涛を見て、現業場を見学し、帰って夕食。万谷新治氏来り、11

時まで談ず。この人は銚子出身。マジメなる人物なり。

314

  午前5時半、目覚む。

  6時電話来。ハイヤー1円で大賀郷へ。乗船出港。

  ムロの群の小島附近で見る。水面をパシャパシャと騒ぐ。

  午前11時半、御蔵島着。

  黄楊(つげ)林□□なり。数百尺の懸崖北随所、飛瀑を懸くる壮観を見る。

  水量、島に珍しく甚だ多し。東京湾汽船萩丸あり。イルカの如き青年、陸より本船に泳ぎ来る。

栗本惣吉氏に会いたき□□□□□やれば、15分の坂道を伴い、大伝馬にて来る。観測を説明依頼

す。□□□□けらる。無電局技工にやらす由。シオナミ立つ。東流1ノット余、強流。

 「白台、赤台、青鰘あり。白台は八丈になく、この黒潮の瀬を乗り越せぬ。御蔵島が限界線で、

寒流の影響をここまで受けるだろうと言う。御蔵漁場は島の東陰。西風ではじきに晴れる。八丈

では雨中々上がらぬ。…」

大カツオ、ヒラマサ曳縄にかかる。

三宅島伊賀谷に午後5時着。上陸して、船長と歩む。雨後の土湿り、黒き清らかな路。鶯鳴き、

木の芽さやかに緑なり。緩やかなスロープ、牛の遠吠え聞こゆ。松の揺れる姿面白し。黄昏れて

伊豆村を経て、大久保を下に見て神着村に着く。

 組合長浅沼道之助テングサ王(資産百万円)、奥谷氏来。テングサ豊凶適温。

315

  朝飯に緑色岩ノリの味噌汁。

  村役場と支庁とに案内さる。村長、収入役、漁業組合有志達、所謂村の有力者のあれこれと会

談する。大いに海洋観測を説く。絶海の孤島へ来て気炎を上げるのを一寸客観すれば可笑しい。

 小暗い椿の垣根、雄山(800m)からなだらかなスロープの薄緑、白い煙は炭焼きらしい。

 大久保の浜から伊豆村、伊が谷に来る。村長、組合長が昼飯を日出屋旅館で歓待する。

 磯で記念撮影。武蔵丸で阿古村へ回る。海崖の奇岩碧潭をなす入江面白し。磯で組合理事に観

測励行を鼓吹して帰船。

 午後3時発。神津島へ午後5時半着。神津島東岸は洞門奇巌に松林古く、神寂びてまことに面

白き島なり。神代よりの歴史を思わせ、原始的風情あり。人情 朴にして我ここに移住せばやの

思いあり。島根性の悪ズレはここに些かも見当たらず。流刑人のなかりしためか。伊豆七島中の

蓋し聖地なるべし。よくもここに来りし。八丈島は都人士に順朴をやや汚されたり。三宅島は神

着村の悪の実をくらえるかの人に失望せり。神津島に到り、余はもっとも喜びを感じ得たり。神

代ながらの日本人の風格に会いたりと。古事記、万葉時代の風情を見たり。船着磯まで迎えくれ

しは、傘さしかけて漁業組合長土谷氏なり。熱心に観測法を研究しくれしは書記藤井氏なり。提

灯持ち、暗き道を宿屋まで案内さる。

 漁業練達者に会いたしと言えば、4人を率いて来る。島の漁業はカツオ、トビ、イセエビ、テン

グサ、サザエ。従来七分が海藻なり。魚価向上とサンマ、ムロ、タカベに出て、新漁業開拓で暮

らし向きは昔に比べはるかによし。この島の印象頗る好し。西風に数度大火災になられた由。

 

316

  朝5時半起床、散歩。海岸の漁師町を抜けて磯馴松の海岸風景を写真写す。天上山険しく聳え

ている。

 午前8時観測をやって後乗船。新島に向かう。

 午前11時着。西風強く風涛高し。黒根にモーターで着き、船と別れ上陸する。

 組合書記の出川氏に案内され、組合に行き、理事梅田氏等に講釈し、皆熱心に傾聴してくれ、

是非組合の重要事業としてやろうということになる。吾妻屋旅館に宿をとる。

 組合の諸氏数人来宿、潮流及び漁業を聞く会となる。

317

  風涛激しく磯に砕け、眞砂を飛ばし、ガラス戸を打って潮ぐもる。遂に汽船休航で滞在を余儀

なくされる。大島へ電報打つ。朝黒根で観測実演。組合から45人同行する。空晴れて終日風さ

わぐ。

318

  目覚めれば風は変われり。北東風なり。昨日の晴は今日の曇、低気圧迫るらし。潮鳴は絶えず。

砂丘は拡がりて、海の面低く緑なり。

 朝食後、組合出川、鮫島、  3氏と観測に黒根まで行く。

 

320 午後 日本水産学会例会

 

42 日本水産学会年会第一日  陸水学会年会

43 日本水産学会年会第二日

412 冷害防止対策協議会 (西原農事試験場)

415 瀬戸内海調査協議会

422 神鷹丸(235トン)竣工式参列

424 日本水産学会例会

427 ボーア教授講演 帝大理学部2号館

428 ボーア教授講演「量子論からみた生物学、哲学書の一般的考察」

 

58 気象学会総会

529()午後 太平洋学術研究委員会

  「東北海区の水温変動に就いて」講演

 

65() 農林省春の運動会 芝公園

69 海洋学談話会 復活第一回(101)

 

 

 

 

聞き取り調査 612日〜618

612 和歌山県田辺町 江川漁業組合 

613 串本港漁業組合

614 紀州古座漁業組合 勝浦漁業組合 

615 三重県尾鷲町  

616 引本漁業組合

617 三重県水産試験場 浜島

618 波切漁業組合

 

623() 東北冷害対策協議会 西ケ原農事試験場

630 六給俸(2百円)に昇給

710 高等官三等に昇る

 

第五次北太平洋距岸一千海里一斉調査 86日〜917

85 夜から船に泊りこむ。

86日 午前5時月島出港。品川羽田沖でコンパス修正。鶴見で三井貯油所から重油12トン。

  館山へ午後3時着。無線中波発振器故障というので、日本無線技師を招く。明朝来る由返あり。

87日 無電技師午後3時着。今夜中、修理にかかる由。夜館山漁撈実習所へ行き、長棟、豊田氏

に会う。風呂を貰い、吉田秀一氏に会う。気仙沼分場長となる由。

88日 日本無線工務員2名来船。修理夜に及び成る。碇泊3日徒然なり。今日も船の周りを泳ぐ。

 生簀でヒシコイワシの泳ぎぷりを見る。

 午後7時過ぎ、上げ潮と一緒に20度の冷水塊、25度余の暖水中に侵入し来り、自記紙上に見事

な不連続線を印す。当時北東風冷たし。

89日 午前9時館山出港。

  Sta.1 は正午野島東。Sta.2は日没。

810日 Sta.3, 4, 5, 6 夜飛魚2飛び込む。

 1,000m深、寒暖計枠ワイヤ?でつぶれ、一方の和製被圧転倒寒暖計の外側ガラス破壊す。

811日 二機測流深層(800m) Sta.6, 7 南西流0.5ノット内外。

 Sta.8 東流0.8ノット、午後8時頃Sta.9 近くでしきりに妙なローリングする。潮浪の立つのが

見える。風もないのに。白い波頭が時々見える。黒潮の強勢な本流の境を通過したものと思われ

る。8時過ぎの自記記象紙上に水温28度から22.5度まで急降したことがハッキリ認められる。

812日 午前8時エンジンストップ。第4ピストンシリンダーの点火装置の頭が熱で溶けたとい

う。漂流NE/E 1.5海里/時。夜までコツコツ機関場の連中は握り飯の立食で寸暇も惜しんで修繕。

813日 その甲斐あって2時から動き出す。この辺り23度余なるもカツオ漁場らしく、午前8

時、午後2時頃カツオ船多数見らる。

 Sta.12 カニ網浮子に卵様のもの多数着いて流れ来る。

 Sta.13 小鳥群、海燕多数。落日夕焼けの映る波間を飛ぶ。(陸近し) 波漸く高まる。

 Sta.14 深夜、烈風津軽海峡を吹き抜け来り、激浪観測に甚だ困難せり。

814日 襟裳E以北凪となる。午前10時マンボー。1040分サンマ群見る。11時潮目を通過す。

小さい白波立つ。東流。海鳥群あり。水温22度より18度に急降す。透明度・水色も急に濁りを

示す。

正午入港。直ぐ釧路新聞三田井氏来る。報告の整理。

815日 碇泊。午前中報告資料の整理。

 昭和1286日〜14日 野島崎200海里から500海里 釧路の間 海況概要

本期東北海区においては黒潮の北上例年に比し著しく優勢にして、主流は野島崎東方(流幅凡そ

100海里、流速2.5ノット)より金華山沖Sta.8Sta.11(流幅凡そ150海里、流速1ノット内外)

に向かい流れ、Sta.47はその反流をなして南西流0.5ノット内外を示す。親潮は勢力甚だ微弱

にしてその末端は釧路沿岸5海里にあり。水温17度余りなり。このため東北海区全般に異常に高

温にして、20度の等温線は襟裳崎東方北緯42-43度を走り、26度線は福島県塩屋埼東を走る。上

50m以浅は昭和9, 10, 11年に比し全般に著しく高温。殊にSta.7, 8, 9において甚だし。昭

8年に比しても更に高温にして、殊に釧路近海50海里以内は4度以上高温なり。Sta.1, 2及び

Sta.10附近の100m以深下層は前年、前々年に比して低温なるものあるに注意すべし。

 午後魚市場へ行く。マグロ(15)のを買いたいといったところ、ただでくれた。金井関次郎

氏に会い、礼を言う。何でも昨夜持ち船がこの沖で3千貫も大漁して、お裾分けであるらしい。

社長嵯峨氏と話してマグロ漁獲□□□帰る。

816日 午前8時半、釧路出港。好い凪である。

  Sta.18 (襟裳E100海里) 午後6時 海流瓶50本投入。二機測流。

  Sta.19 20.0℃ 小さい5-8寸サンマを掬う。最小7cm, 最大21.5cm 二機測流。

817日 10時 Sta.20  19.0度 9時頃に15℃の最低温の寒流の狭い帯をこえる。

  午後5時 Sta.21  21.5℃ 霧近く。

  午後10時半 Sta.22  21.4

818日 午前5時 Sta.23  22℃ 大波となり、打ち込む。

  12時 Sta.24  21.9℃ 激浪山の如し。

  午後7時 Sta.25  20.8

819日 午前2時 Sta.26 襟裳500海里 19.9℃ 星空 大風 直立し難き動揺

  ナンゼン式メッセンジャー角度大で落ちず。北原式、エクマン式のを併用す。

  Sta.27  20.8℃ 13時 Sta.28  16.9℃に急降す。20時半 (水温18時に急降す)

  夕方海凪ぐ。

820日 午前4時 Sta.29  15.4℃  

  Sta.30  13.3℃ 午前10時 風浪大

  Sta.31  14.2℃ 午後7

821日 Sta.32  12.7℃ 0時 満月 波状雲

  Sta.33  9.4℃ 午後4時 傾角大なるときは中層プランクトン使錘を投じ成功。海鳥多く見え

出す。

 Sta.34  6.2℃ 午前9時 マルコニー式音響測深儀250尋閃光を見る。磁針を平均位置に止め

る工夫出来ぬか。

 Sta.35  9.4℃ 午後1

 単冠湾に午後3時投錨。午後及び夜、観測記録を整理。疲労相当甚だし。睡眠不足なり。頭熱

足寒、夜ストーブ入る。気温10℃、寒風北より身震いさす。この一週間、毎日のマグロ攻めに閉

口す。蓋し釧路魚市場より貰った15貫マグロが刺身、照り焼き、酢の物等に変化して攻め立てし

なり。

822 碇泊

823 午前8時半出港。とてもよい凪である。霧笛。

824日 濃いガスがかかる。夜月が幽暗に生まれぬ前の世界を教える如く真上に見える。ベタ凪

で幸いである。食も進み、航海も楽しい。

 二機測流2点 Sta.38  150海里 S35W 0.7ノット、Sta.39  SE 0.5ノット 海流瓶投入

寒流域は黄緑濁のプランクトン、紅色大型Calanus

825日 風波増し、ワイヤー傾き大。中層プランクトン網の使錘により効果を収む。

826日 3,000mメッセンジャーを急ぎ、2,000m失敗す。

霧雨、水温10-11度、低し。プランクトン少なし。

827日 午前中曲がり角。163E, 48Nへ来る。去年はサンマ本海区に大漁の由、今年居らず、船

員失望す。

828  □□□大浪

829日 夜中シケでローリング甚だし。霧中音響測深潮流計にかかるのをやめて、幌莚海峡柏原

(パラムシル)に入る。出帆前の快鳳丸に赴き、武富船長に会う。ウランゲル島、71Nまで北氷洋

を調査。パックアイス圏に入りて苦心してこと、最低気温-1.5℃位で寒さは大したことはない。

大きな水路が氷の中に空いている。岸には氷ない。底棲の珍動物、プランクトンなど見せて頂く。

鯨群多き由。海象をみたこと。トロールの結果は魚群の方はカジカみたいなもので、余り面白く

ないらしい。航海は夏78月心配ないらしい。

 午後4時、柏原幌莚水産事務所へ行く。それから北千島水産会へ。

830日 カレントドラグ10時と3時の2回投入。上げ潮4.2ノット、昭洋丸の白鳥船長以下来船、

対談。

  午後上陸、片岡湾 太平洋漁業事務所へ。俊鶻丸へ。日比船長に会う。

831日 昭洋丸からタラバガニ貰ったので、珍味に皆飽くほど食う。西大風、村上湾に避泊。

一度磐城1崎鼻まで出たが、物凄いしぶきに驚き、引き返す。

91日 昨日以上の西大風。どうにもならぬ。荏苒(じんぜん : 歳月の次第に進み行くさま)日を

費やすも如何と、船長と協議せるも、鳥島白岩方面の測流も、ここの水道の測流も困難なる模様

なれば、ここで錨泊、26時測流を行うこととする。明日凪になれば、オホーツク海を観測して帰

途に向かうのであるがどうか。昨日今日、風強きも生暖か。日中20度を越える高温であった。船

員も大分退屈の模様なり。夜快鳳丸来り、タラバガニ密漁船没収を貰い、珍味に飽くほど食らう。

92 午後、潮流計観測を終わる。凪よくなる。幌莚磐城崎より樺太中知床岬に向かい50海里

ごとに観測。プランクトン多し。ウネリあり。

 

96 朝、曲がり角へ来る。夜サンマ群流網にかかるを食べる。世人多く味わい得ざる初サンマ

の味なり。

97 朝イルカ突く。マグロ群跳多し。国後水道に入り、潮流計を午前9時より開始。雨なり。

98 朝タラ釣れる。小さいもの多し。10時半より色丹島斜古丹湾に入る。旧噴火口跡の円形

湾で、入り口の崖に赤き蘰(かずら)、丘の緑は実に美しく、□□□と見ゆ。煙雨濛々山又奇、色

丹松谿(けい)間に簇生(ぞくせい)す。何たる美ぞ。天然の公園。白樺の木あり。野の美しく珍し

き花の数々。午後上陸して海苔や尋ねるに、本島は本年岩ノリだめ。フノリは豊年なりしと言う。

捕鯨会社を訪問。クジラの話を聞く。この8月半ばカツオが湾内に群来した。同時にイワシも沢

山獲れた。という珍しい話を聞く。

午後5時錨を捲き、出港。沿岸の浅い観測も凪で楽の上。

99 正午、釧路港に入る。夏雲蓬々(ほうほう)として奇。阿寒も晴れたり。白鴎ゆるやかに舞う。マグロなどの漁船の幟賑やかなり。釧路新聞来り、余のひげ面写真写す。北海タイムスも来る。東北海区及び北海道沿海、本年は昭和8年並以上の高温に対し、中部以北千島沿海及びオホーツク海は前年□□低温にて海況に大差なることを話す。

910 好晴 報告原稿書く。午後魚市場へ行き、マグロ報告の件依頼し、水産物検査所釧路支所へ行き、イワシの話を聞きつ、資料を写す。田村松太郎氏を帰りに訪問。今年大羽イワシが後でも良く獲れる。一月早く漁期始まったことを聞く。

911 台風740ミリ現れ、四国から鳥羽―能登沖に出る。東北三陸沖にて遭遇の推測ゆえ出港せず。夜に入って漸く風雨。

912 早朝大いにシケる。副低気圧740ミリ通過。ウネリ防波堤に雪花の如く砕く。台風は函館より北東に通過。

913 朝、釧路出港。ウネリ南より大なるも北の追い風なり。30-40海里海鳥群夥しく、波間にマグロ群を見る。Sta.74津軽海峡東方、津軽暖流著しく強勢。ワイヤ傾斜甚だし。船を廻したり、メッセンジャー重くしたり、ウエイト重くしたり、色々と工夫する。三陸沖20度余。

914 金華山附近25度に急昇する。レプトセファラス、ウナギの仔らしいもの稚魚網に入る。福島沖及び鹿島灘23度余に降る。

915 銚子沖は24度に。

916 勝浦東50海里27.2度。この辺りはシケて激浪、疾風。立ち難いが風は生暖かくて寒からず。野縞崎附近に来ると、激しい横殴りの雨、怒涛。11時に観測してから、いつまでも布良がかわされぬ。午後5時やっと洲ノ崎に来て、館山に入港。午後6時。756ミリの小低気圧中心に散々悩まされた。北東烈風で潮が速いので、この始末であった。

917 正午東京入港。懐かしく嬉しい。

 

 

918 午後春日場長、丸川さん、相川さんと丸ノ内中央亭海洋漁業振興協会へ。カツオマグロ

漁業統制の可否とその具体的方策に三宅局長、寺田課長、春日場長、国司共同漁業が各々各論?

?を述べる。結局、三崎、静岡の方が現有勢力基準の隻数制限を言うのだ。ソフト帽子8.5円は

ずみ買う。帰りに「回想の寺田寅彦」を買う。

920() 前渡金会計整理。山本祥吉さんから南洋のお土産に絵ハガキと椰子の実細工を頂く。

午後場長室で11月上旬に開かるべき漁撈海洋調査会議題を協議す。酒井君底曳を転業さすべき

に沿岸漁業の研究をなすことを提案し、沿岸漁業現勢調査をなさんと言い、場長反駁し酒井君に

痛論火を吐く。

921() 中外商業丸山記者来、来月6日まで海洋随筆約す。

  会計検査院来る。見学もあり。

922() 会計検査院第2

 

925() 日本水産学会、丸善、西村君と日比谷劇場へ。

926() 月報海洋図原稿つくる。

 

103() 「海と人間」を中外商業へ書き送る。

104() 西村巌さん若松連隊に応召を上野で送る。万歳万歳

107() やっと今日一日かかって「東北海区に於ける海況の変動に就て」書き上げる。

 海洋学談話会 新野、朝比奈、岡田三氏。

 ガンさん外地行きに不適との理由で除隊となった。

108() 午前、散らばった東北の資料整理。午後からカツオの研究を開始す。気象学会へ。

1011() 帰り水路部に寄り、大東氏に「大西洋氷山監視報告」返す。

1014 早朝、岡田光世氏宅前に応召見送る。この日、動員下令。

  凌風丸午後2時半見学。日高氏、重松氏に会いたり。偕行社へ行く。

1015 午後、偕行社に行き、軍服誂え、長靴も頼む。軍帽、水筒など求む。

1018 寺田全集 書簡集()読みふける。

1019() 「科学主義工業」野口氏、海氷のグラフにつき相談に来る。

1020() 中野宗治氏に寄書一句       新涼や 蟹は味よき 海の青

1022() カツオ予報の指針を記す。

1023() 陶然として晩酌をやっていた所、福島県の東日本太平洋海洋調査協議会に1115

日、16日出張し、講演なすよう準備せよとの場長よりの話。 

 場長が115日からの蒼鷹丸乗組調査員を漁況係と通報係より1名ずつ出すようにと言ったの

で、相川、木村君らと大揉め。僕の指金の如く誤解す。船が嫌いは損得の判断から出発している。

海洋調査も年齢は同じ団栗の背比べで、ズバ抜けた者がいない。それが物言えば畏れ入るような

ものがいないのが、メンドウな原因である。クダラヌ問答。第三部主任の必要が分かる。

1025() 「かつお漁況の変動と海況の関係(略報)」書き上げる。

1026() 月報海洋図に終日。

1027() 午前月報。

1029() カツオ漁場前進海区横断観測立案。京大宮地伝三郎氏来訪。エクマン採泥器改良の

由。夕方テニス。

1030() 協定事項の変更励行の件立案。

  小口八郎氏の路傍水溜りに見た周期的柱状渦シオメの科学奇書原稿加筆し返送。

  午後、深川公園で水講・水試のテニスマッチに出る。5回やって2回勝つ。結局、水試1015

でマケ。

1031() 午前、近所の百姓さんから買った檜6(1.5)、八つ手2(タダ)、八重の白山

茶花1(3.5)、木犀1(50)を穴掘って植えた。

111() 漁海協議会の相談あり。水産予察調査の日本海読み始む。面白し。

112() 岸人大佐、第五課長に栄転。挨拶に来る。小林勇君に手紙出し、第二の著のために

「寺田先生の面影」を書き加え、同封に「風雅の□□□と寅日子先生」加筆し送る。

113 明治節

  余の海洋研究宿題

1.  海洋学史              東西の研究、海洋学者伝記をも編述

2.  海洋観測法             メテオール号報告の研究

3.  海洋の数理的研究 論文完成のため

4.  かつおの漁況と海況との関係  役所の報告を書くため

5.  海洋研究法の原理考察

6.  漁業者の智□より新しき海洋学体系化

114 蒼鷹丸出港す。(岡本、丸山)

115() 8月の観測結果の取り纏め、遅々進まず。帰りの電車で海流瓶の数理考える。物に

なりそうで嬉しい。

 海流瓶、標識放流の理論的研究

 浮遊物の集積と半島内湾との関係

 海洋の立体的構成に就いて

 海水温度の変化に関する研究

119日〜12 第4回漁撈・海洋担当主任官会議。

1111 朝日高さん帰る。論文の話する。

1114() 福島県小名浜町 水試にて漁況聞き取り

1115() 第22回東日本太平洋協議会 第1

1116() 第2日 小生の話は今年の調査報告。

江名 清勝丸船主 佐藤助五郎(63) 聞き取り。

1117() 日高さんから親切な至急の手紙来ていた。

1118 一日腹案練る。夜台長に電話、明日行くこと決める。

1119 午後4時過ぎ、中央気象台で台長に会う。

1120() 早速原稿書き始める。

1121() 役所へ行って氷山のことを調べ、テニス。タイプライタ打つ。少し気が早い。

1122() 原稿(和文)能率上がらず。

1123() 論文ザッと終わりまで書き上げる。これからが大変だ。難問に肉弾戦である。

 

125() 凍る寒さで、午後8時半までタイプ41頁打つ。

126() 農林省手当560円頂戴す。中山敬郷さん上京し来る。横浜へ出迎え。金子五郎氏貨

物船に乗る口実を波動力学に求めること相談に与る。右田さん風による煙塵の害と流線の関係に

つき問われる。

 

1213() 南京完全占拠。

1214() 旗行列あり。

1215() 旗行列あり。

 

1226() 午後7時半〜11時、藤原先生にお目にかかる。論文見て頂く。懇切に直される。

1228 御用納め。場歌二唱。

  本年は熊田朝男技師亡。両増田、栗田、綿貫君応召出征。

 予算 千トン試験船、最後内閣更迭でだめになる。多産水産物処理を蔵相の反対で最後に据え

られダメ。

 午後2時、中央気象台、岡田台長にお目にかかる。「海洋の研究も段々進んで来た。野満さんは

計算ばかりだが、日高君は実地もやるからよい。潮目の研究は中々面白い問題だ。」「君は高知の

どこか。今度土佐に国立測候所が出来る。宇田滄溟先生はよく知っている。漢詩人で有名な人だ。

本になってあるかね。頂ければ有難い。漢詩は簡潔に文を書くに役立つ。俳句や漢詩をやらない

人は論文が冗長になっていけない。」論文お話する。「休み中に見ておくから。」

1231 岡田台長宅へ滄溟集とシオメ   ことづける。

 

 

            歳 晩 之 感

 昭和12年は果然日本にとっては一つの蓄積されたポテンシャルエネルギーがカイネチックに変化して、爆発点に達した年であった。

 対支政策、大陸政策が積極的に強行された年である。

 醞醸されて来た不安の空気は遂に火を発したのである。

 7月、盧溝橋の銃声は北支に、上海に、遂に南京まで戦雲を拡げた。

 爆撃の猛鷲は黒き雲の如く支那の空を翔り、火の柱を立てた。

 鉄火によって、血潮によって何を勝ち得んとする。

 数多の青年壮者は敵味方共、この記念すべき歴史の一頁を開くために犠牲となったのである。

 世界の指弾を受けてもひるまず、嫌われ者の横車や独伊と結んで、防共の旗印も高く、頑張った日本。未来は何処に行かんとはする。[以下略]


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