Falkenberg文庫とPaul Falkenberg博士
元ロストック大学教授 Paul Falkenberg博士の所蔵されていた植物学関係の書籍、雑誌、別刷類を収蔵した文庫である。
本文庫には、今日の生物学や植物学発展の基礎となった、Haeckelの「天地創造史」、Sacksの「植物実験生理学」や「植物学教科書」、
Van Tieghemの「植物学概論」、Strasburgerの「植物学教科書」、K. Goebelの「植物器官学」、De
Vriesの「突然変異説」等の多数の
古典的文献がある。その他に、岡村文庫にも含まれない多くの藻類学の文献がある。また、19世紀から20世紀にかけての西欧の
研究者による報告別刷も多数整理収蔵されている点でも特色がある。
本文庫の購入に関しては、Falkenberg博士の蔵書が丸善から水産講習所に購入の打診があった際、購入予算がなく、
1919(大正8)年から普通植物学の非常勤講師をされていた故恩田経介先生(晩年は明治薬科大学初代学長)が一時費用を立て替えて
購入できたというエピソードがある。
記録によれば、博士は単子葉植物の器官形成に関する研究でドイツのゲッチンゲン大学で学位を取得。次いで、マツバギクの
二次肥大生長に関する研究で同大学の教師の資格を得られた。博士の研究対象は当初陸上植物であったが、ナポリ臨海実験所で
海産植物を研究されてから、海藻類の形態研究に向けられた。これを集大成した「ナポリ湾とその周辺海域のフジマツモ科植物」
Die Rhodomelaceen des Golfes von Neapel und der angrenzenden
Meeres-Abschnitte
/ von Paul Falkenberg (1901)は、
754ページ、24図版に及ぶ大著で、当時の学会で絶賛を博した報告である。