「昭和53年度における大型外国図書の集書計画」に基づく文部省の特別予算措置により、原本50冊を購入した。
本書の紹介は、図書館雑誌 76巻, 11号 (1982) p.719-720に、「チャレンジャー号探検記 / 石垣光子著 (文部省の外国図書購入費の配分による大学別人文・社会科学系外国大型資料 その9)」として掲載されている。
チャレンジャー号は、排水量2,306屯、長さ220ft、幅30ftで、1,234馬力2筒補助蒸気機関を備えているが、通常は三本マストで帆走するコルヴェット艦で、測深綱3,000ファゾム、ドレッジ綱4,000ファゾム(断面周長の漸増綱)を備えていた。艦長司令は、Captain George Strong Nares、航海長は、Thomas Henry Tizard中尉であった。
科学調査隊長は、Charles Wyville Thomson (1830-1882)で、隊員は、John Young Buchanan (1844-1925,物理、化学担当)、John Murray (1841-1914) 、Henry Nottidge Mosley (1844-1891)、Rudolph von Willemoes-Suhm (1847-1875, 太平洋で病死)、John James Wild(隊長秘書兼画家)であった。
チャレンジャー号探検は海洋を科学的に調査して、近代海洋学がここに始まるとされるほどの功績をあげた。特に表層から深海底までの 海洋動物学上の知識を激増したのが最大の功績である。非常に多数の新種は得られたが、太古の原始態のものではなかった。一方、大洋の最深部にさえ最下級動物から魚類に至るまで、多数の生物が見つかった。報告された甲殻類1,000種は全甲殻類の1/4に当たる。Ernst Haeckel (1834-1919)はチャレンジャー号採集標本で10年研究に没頭して放散虫類4,000余種(内90%が新種)を3巻報告した。12,000個の底質標本は、John MurrayとAbbe Renardが整理し、後世に残る古典的深海地質の大研究を完成した。
海洋研究の科学的成果としては、以下の事があげられる。
- 等深線図ができ、海底は、山や、谷のある起伏に富んだ不規則なものだったこと。
- 100ファゾム以深の水温が季節によって余り変わらないこと。
- 大洋底の水温・密度は広範囲一定で、海区により特定値を示すこと。
- 島や険岩の正確な位置を決定したこと、海流、気象を調べたこと。
- 海水の化学面では、William Dittmarが1880年有名な全分析をおこなって、今なお基準になっており、塩分の化学的成分相互比が総量のいかんにかかわらず世界海洋でほぼ恒常なことを実証した。
- 外洋の海底堆積物を体系的に分類した。
- 外洋の動物プランクトンに関する知識を飛躍的に増大させた。